Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

2023-01-01から1年間の記事一覧

地球環境変動とスピルオーバー感染症の脅威

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 今月 8 日付けで、BMJ Global Heath 誌に、スピルオーバー(異種間伝播)感染症(→スピルオーバー:ヒトー野生動物間の新型コロナ感染 )に関する一つの論文が掲載されました [1](下図)。今後、人為的要因…

認知の霧の中にいるという米国人が増えている

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 今朝、コーヒーを飲みながら、ウェブ記事を探索していたら、New York Times(NYT)の記事 [1] が目に留りました。物事を考えられない、思い出せないという認知の霧の中にいる米国人が増えているという記事です(下図…

豊橋公園の新アリーナ計画問題

カテゴリー:その他の環境問題、公園と緑地 、社会・政治・時事問題 はじめにー豊橋公園の概要 豊橋公園(とよはしこうえん)は、愛知県豊橋市今橋町にある緑豊かな城址公園です。豊橋駅から北東方向に歩いて30 分弱(約 1.5 km)の距離にあります。広さは 2…

感染対策としての手洗いの効果

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 手洗い、アルコール消毒などの手指衛生は非医薬的介入(non-pharmaceutical intervention, NPI)による感染症予防策の基本の一つです。手を薬用石けんで洗えば、手に付いた病原体を不活化できると同時に洗い…

日本の研究はもはや世界に通用しない-理由はここにある

カテゴリー:科学技術と教育 日本の科学研究力の低下が言われて久しいですが、今回ネイチャー誌に、サイエンスライターAnna Ikarashi(五十嵐杏南)氏による「日本の研究はもはや世界に通用しない」という記事が掲載されました [1](下図)。強力な研究労働…

戦略的マスクキングと世界標準から外れた日本のマスク事情

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 日本を含めて東アジアの国々は、一般的に、欧米に比べて衛生対策としてのマスク着用に関する意識が、個人レベルで高い傾向があります。東アジアの国では、普段からマスクの習慣がある一方、欧米ではマスクは…

感染症流行に際して免疫負債論を考える

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに フランスの医師らによって提唱された「免疫負債(immune debt)」仮説 [1] は、閉鎖的生活などによって長らく病原体に曝されない状態が続くと免疫が低下し、社会生活が正常に戻ったときに感染症に罹りやすく…

「給食時の黙食がコロナ感染に与える影響」研究の問題点

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 最近、「学校給食時の黙食がCOVID-19の感染に与える影響」という研究が報告され [1, 2]、ウェブ記事やSNS上でも取り上げられて話題になっています [3]。これは、高橋遼氏(早稲田大学准教授)、津川友介氏(…

長期コロナ症は血液バイオマーカーで識別診断できる

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに SARS-CoV-2に感染して起こるCOVID-19では、たとえ急性期症状が回復した後でも、長期コロナ症(long COVID)に移行することがあります。日本では罹患後症状(post-COVID-19 conditions)とか、より一般的には…

SARS-CoV-2感染は動脈硬化を促す炎症反応を引き起こす

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) SARS-CoV-2 は呼吸器系ウイルスとして知られていますが、このウイルスが原因で起こる COVID-19 は、全身性疾患の感染症であり、無症候性感染から急性呼吸困難、多臓器不全、死亡に至る多様な臨床症状によって特徴づけ…

文科省のガラパゴス的マニュアルが校内感染を促す

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 感染防止対策や公衆衛生の取り組みにおいては、基本的に「何をなすべきか」が一義的に求められ、それをいかに科学的に、合理的に伝えることが重要です。ところが、日本政府や省庁が繰り出す基本的ガイドライ…

季節外れのインフルエンザ流行の謎

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに この夏、COVID-19の第9波流行が拡大しました。9月に入り、患者数のピークは過ぎたようにも思えますが、まだ高いレベルにあり、油断できません。加えて、季節外れのインフルエンザも拡大し、全国的に患者数が…

感染症法を崩壊させた政府ーそして第9波流行

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 2023.9.12更新 第9波の COVID-19 流行が収まる気配がありません。今は感染者数も死者数も把握されていませんので、受診した患者数の記録で推測するしかありませんが、モデルナのサイトで公表されるデータに基づけば、…

海外メディアが伝える処理水放出に関する科学者の見解

カテゴリー: その他の環境問題 はじめに 日本は福島原発事故跡から発生する放射能汚染水の処理水(ALPS処理水)の海洋放出を開始しましたが、この前後において、海外のメディアが盛んに関連記事を配信しています。それらの中には海洋放出に対する海外の科学…

放射能汚染処理水放出と今後の影響

2023.8.30更新 カテゴリー:その他の環境問題 カテゴリー:社会・政治・時事問題 はじめに 日本政府と東京電力は、8月24日、福島第一原発事故跡の燃料デブリから生じる放射能汚染水について、その処理水(ALPS処理水)の海洋放出を開始しました。処理水放出…

医者が拡散するCOVID-19の誤情報

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19 パンデミックは、この病気と原因ウイルスに関する研究を加速化し、日進月歩の新規情報が専門家のみならず、一般人にも素早く届く環境をつくり出しました。有名学術誌上の論文のオープンアクセス化…

メディアも政府も口にしないコロナに毎週人々が感染する

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 先日、エックス(X)(旧ツイッター)のタイムラインに、ジョン・スノウ・プロジェクト(Jons Snow Project, JSP)のポストが目にとまりました(以下)。"International Guidance on Preventing Long Covid"…

下水データが示す第9波流行の動向

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに いまCOVID-19の第9波流行が拡大しています。しかし、政府はこの感染症の5類移行に伴って、従来の疫学情報を取得・公表することを止めてしまいましたので、国民は第9波流行がどの程度の規模で起こっているの…

少年たちを手なづけるためのアイドル帝国と性的虐待

カテゴリー:社会・政治・時事問題 "X"のタイムラインを見ていたら、ハリウッド・リポーター(The Hollywood Reporter, THR)がジャニー喜多川氏による性的虐待の問題を取り上げていることに目が留りました(下図)。中を見たら「ジャニー喜多川の性的虐待ス…

エリスとよばれるCOVID-19ウイルスEG.5.1がまん延

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) いま日本ではCOVID-19の第9波流行が拡大しています。その拡大の原因となっているのがEG.5.1変異体(通称エリス)です。このウイルスはいま、東アジア、ヨーロッパ、米国でも流行り始めていて、新しい流行の波として捉…

歴史に学ぶ、コロナ後で起こること

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19の世界的な流行は4年目に入り、急性パンデミックへの対応から長期的集団障害の問題への取り組みに焦点が移りつつあります [1] 。COVID-19では、急性期の症状に続く長期の症状が一定の割合で発生する…

長期コロナ症が子どもに及ぼす精神的・心理的影響

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19パンデミックは4年目に突入し、5月に世界保健機構(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了した一方で、SARS-CoV-2はオミクロン変異体からさらに感染力と免疫逃避力を増し…

COVID-19の年代別死者数の推移

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19パンデミックでは、日本は流行波が襲来する度に健康被害と犠牲を大きくしてきたのは周知の事実です(図1)。特にオミクロン波が訪れて以降、感染者数が爆増し、第8波で死者数は最多となりました。こ…

鼻スプレーで感染予防?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 先日、シュプリンガー・ネイチャーから定期配信される雑誌目次一覧を見ていたら、興味深い記事が目にとまりました。Nature Communications 掲載の論文で、特定の糖脂質を鼻から吸いこむことで、SARS-CoV-2、…

日本での第9波のなか、下水データは米国での新たな流行の始まりを示す

カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年) はじめに 今日、COVID-19に関する興味深いウェブ記事 [1] に目が留りました。「日本では第9波流行が席巻する中、下水データは米国での新たな流行の始まりを示す」(As ninth COVID wave sweeps Japan, wastewater da…

コロナ流行が及ぼした子どもの心への影響ーマスクの影響は?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVIDパンデミックは、感染による身体への直接的な健康被害のみならず、人々に大きな精神的な悪影響をもたらしています。特に子どものメンタルヘルスへ及ぼす影響が大きいことは、パンデミックが始まった直…

感染対策の緩みとともに襲来した第9波流行

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 日本ではCOVID-19流行の第9波が襲来しています。この1週間余りの政府のSNS上の発信、メディアの報道、専門家の発言などから、流行の現状を考えてみましょう。そこから見えてくるのは、流行の実態と政府・メディアの認…

室内二酸化炭素濃度によるコロナ空気感染確率の推定

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19は、SARS-CoV-2の空気感染(エアロゾル感染)によって主に伝播していくことが知られています。したがって、閉所・室内環境の感染防止では換気や空気浄化が重要になるわけです。換気効果の指標として…

子どもが感染を拡大させる

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 米国ボストン小児病院などと台湾の共同研究グループは、米国の約85万世帯の COVID-19 感染の70.4%が子どもから広がっているという研究結果を報告しました。この報文は、6月1日付けの JAMA Network Open に…

SARS-CoV-2の進化と将来のシナリオ

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 世界保健機構(WHO)は、5月5日、COVID-19に関する「世界の公衆衛生上の緊急事態」(the public health emergency of international concer, PHEIC) の宣言の終了を表明しました。国内では、5月8日、政府がこの感染症…