Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

2021-01-01から1年間の記事一覧

日本で変異ウイルスの系統を「株」とよぶ不思議

カテゴリー:感染症とCOVID-19 カテゴリー:ウイルスの話 はじめに いま日本では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によるCOVID-19の流行について、原因となっている変異ウイルスをデルタ株とかオミクロン株とか、「株」という接尾語をつけてよんでいます。…

オミクロン変異体が意味するもの

カテゴリー:感染症とCOVID-19 カテゴリー:ウイルスの話 2021.12.11:08:10更新 インターネットで科学記事を検索していたら、フォーブス紙に寄稿したウイルアム・ハセルタイン(Williams A. Haseltine)氏の記事 [1] が目に留まりました(下図)。彼は、ハー…

ファクターXの候補としての交差反応性T細胞

カテゴリー:感染症とCOVID-19 2021.12.08更新 はじめに COVID-19 のパンデミックにおいては、欧米諸国に比べて日本を含む東アジア諸国の感染者数や死者数が少ないことが注目されてきました。その差異について、未知の要因が関わっているのではないかという…

SARS-CoV-2の組換えによる変異-オミクロン変異体の出現

はじめに SARS-CoV-2の変異体の一つであるオミクロン変異体(Omicron variant)は、WHOによって「懸念すべき変異体」(variant of concern、VOC)に分類され、いま世界中でその流行拡大が懸念されています。なぜ、この変異体が注目されるかと言えば、スパイ…

ワクチン未接種者に対して汚名を着せることは不当

どうも、COVID-19パンデミックやCOVID-19ワクチンは、為政者や科学者の頭の中までおかしくしてしまうようです。 米国疾病対策センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長は、7月16日の記者会見で「ワクチン未接種者のパンデミックが起きつつある」と警告し…

ワクチンと治療薬がスーパー変異体の出現を促す?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 2021.11.23更新 英ガーディアン紙は、いま COVID-19 パンデミックの主流を占めているデルタ変異体(Delta variant)に替わって新しいスーパー変異体が出現する懸念があるという、専門家の見解を伝えました [1]。記事のタイトル…

mRNAワクチンは心筋へのT細胞浸潤と内皮の炎症を劇的に増加させる

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 私は以前のブログ記事で、SARS-CoV-2の全スパイクタンパク質をコードするmRNAワクチンは安全性の面で問題があること、mRNAドラッグプラットフォームのワクチン応用自体が健康人には馴染まないことを述べました(→ワク…

ファイザーワクチンの粗悪な臨床試験が内部告発で明るみに

最近、BMJ誌に、ファイザー社ワクチンの治験に関する衝撃的な記事が掲載されました。スペインのジャーナリスト、ポール・タッカー(Paul D. Thacker)氏がBMJ誌に投稿した記事 [1] で、以下のタイトルがついています。 "Covid-19: Researcher blows the whis…

感染流行「120日周期説」に基づくAI分析の稚拙さ

はじめに 昨日(11月16日)の東京新聞電子版に「人の流れ増えたのにコロナ感染急減 理由に「120日周期」説 AIが予測的中 第6波はいつ?」というタイトルの記事 [1] が出ていました。私はこの記事を読んで、分析の安易さと稚拙さに腰が抜けました。なぜそう思…

エラー・カタストロフ限界説の誤解

更新:2011.11.11:23:50 はじめに エラー・カタストロフ(error catastrophe)とは、過剰な突然変異によって生物やウイルスの種・個体内の正常な遺伝情報が失われ、壊滅的になることを言います [1]。マンフレッド・アイゲン(Manfred Eigen)[2, 3] が提唱し…

テレビの情報番組が伝えた「維新」躍進の分析

はじめに 今日の読売テレビの番組「ウェークアップ」では、先の総選挙で日本維新の会が躍進したことを話題として取り上げていました。馬場伸幸幹事長をリモート生出演させながら、勝因の分析やこれからの国会の枠組みの予想について伝えていました。 本番組…

日本維新の会は右翼のポピュリスト政党

2021.11.05:20:05更新 はじめに 今回の総選挙で日本維新の会が躍進しました。事前の世論調査では維新の好調は伝えられていましたが、これほどの議席増(約4倍)とは、大方の人は予想していなかったのではないでしょうか。 この党の幹部が常日頃口にするのが…

海外メディアは衆院選における維新の躍進をどう見たか

総選挙がおわり、与党第1党である自民党の安定多数の議席確保と野党第1党の立憲民主党の大幅議席減という結果に終わりました。その中でも日本維新の会の選挙前議席の4倍にも上る獲得議席は目立ちます。 日本の大手新聞は早速この選挙結果について報じてい…

流行減衰の原因ーウイルスが変異し過ぎて自滅?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 国立遺伝学研究所と新潟大学の共同研究チームは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の nsp14 遺伝子が変異することが、第5派流行の減衰に繋がった可能性があるという研究成果を日本人類遺伝学会で発表しました。メデ…

米NIHが武漢の危険ウイルス研究への資金提供を認めた

カテゴリー:感染症とCOVID-19、ウイルスの話 はじめに 米国国立衛生研究所(NIH)が、中国の武漢ウイルス研究所でのウイルスの機能獲得実験に資金提供していたという事実が明らかになってきました。ウェブ記事や SNS 上でこの事実が取り上げられていますが…

流行減衰の再考と第6波に備えて

はじめにー異常な流行減衰 大きな被害を出したCOVID-19第5波流行ですが、現在、感染者数が急減して昨年の10月レベルほどになっています。今日(10月22日)の新規陽性者数は全国で325人、東京で26人であり、東京は全国の8%を占めるにすぎません(図1)。この…

SARS-CoV-2変異体の疫学的特徴およびワクチン・非医薬的介入の効果

はじめに 現在、日本ではCOVID-19の第5波流行が減衰し、全国の新規陽性者数が数百人のレベルで推移しています。社会・経済活動の再開へ向けてワクチン・検査パッケージといっしょの「実証実験」なるものも行なわれ始め、テレビのワイドショーや情報番組も楽…

海外のメディアが伝えた日本の第5波流行の減衰

はじめに 日本ではCOVID-19の第5波流行が急速に萎み、現在、昨年の10月を下回る感染状況になっています。今日の新規陽性者数は月曜日ということもありますが、全国で231人、東京で29人です。この急速減衰の理由については理由がはっきりせず、専門家の間で…

mRNAワクチンと免疫記憶

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに COVID-19 mRNAワクチンは、大量接種プログラムのワクチンとしては前例のないものです。パンデミックという危難時だからこそ、緊急使用許可を経て使われてきました。その効果については一定の治験を経て確認されている…

高齢者で高まるブレイクスルー感染のリスク

私は8月16日のブログ記事「デルタ変異体の感染力の脅威」において、雨天続きによるエアロゾルの減少、人々の外出控え・自粛行動、それにワクチン未接種のリザーバーの縮小によってCOVID-19の第5波流行は減衰していくだろうと予測しました。事実、8月中旬以降…

ニュージーランドのゼロコロナ戦略転換

はじめに ネットニュースを見ていたら、「NZ、感染ゼロ戦略断念 ワクチン普及でコロナとの共生模索へ」というロイターの記事 [1] が目に飛び込んできました。AFP [2] やガーディアン [3] も同様に伝えています。ニュージーランドはいわゆるゼロコロナ戦略…

東アジア・西太平洋地域の感染流行の比較から見えてくるもの

はじめに 日本のCOVID-19第5波流行は過去最大の感染者数を出し、7月12日の緊急事態宣言発出後から今日(10月3日)までの累計では、約88万人の陽性者数になりました。これは、これまでの全陽性者数の52%に相当します。ワクチン接種が進んでその分重症者数や死…

mRNAワクチンで作られたスパイクタンパクは血管を駆け巡る

はじめに COVID-19 mRNAワクチンを注射した際に、ヒト体内でどの程度抗原ができるか、その運命はどうなるのか、よくわかっていません。唯一の研究例として、ワクチンを接種した人の血液中にスパイクタンパク質を検出したOgataらの報告 [1] があります(→mRNA…

感染流行減衰の要因:雨とエアロゾル消長

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 私は、8月16日のブログ記事で、第5波感染流行が首都圏で頭打ちになったのではないか、そして、これ以降減衰するのではないかと予測しました(→デルタ変異体の感染力の脅威)。さまざまな減衰要因が考えられますが、主…

withコロナ vs. zeroコロナ

はじめに 日本では、コロナ禍における、ウィズ (with) コロナ、ゼロ (zero) コロナという二極化する言葉がメディア上で飛び交っています。そして、ほとんどの場合、テレビの情報・ワイドショー・バラエティー番組のMCやコメンテータが、さも当たり前のように…

ブースター接種を巡って交錯する科学と政治的思惑

2021.09.18: 15:21更新 はじめに いまCOVID-19ワクチン接種先進国の間では、3度目の投与となるいわゆるブースター接種や4度目の投与が検討されています。イスラエルではすでに3度目の接種が実施されていますが、それにもかかわらず、いま感染者が急増し、1万…

いま一般人に対するワクチンのブースター接種は必要ない

はじめに 世界のワクチン接種先進国の間では、いまCOVID-19感染のリバウンドやワクチンの効力の低下に鑑みて、完全接種後の余剰分について追加接種(ブースター接種)を行なうことを検討しています。イスラエルのように、すでに実施している国もあります。 …

イングランドのワクチンパスポート導入中止

はじめに 英国BBCは、今日(9月13日)、いわゆるワクチンパスポートについて、ナイトクラブや大規模イベントへの入場に導入する計画は中止すると、保健相サジド・ジャヴィド(Sajid Javid)氏が発表したことを伝えました [1]。それ自体の目的化のために進め…

第5波感染流行が首都圏で減衰した理由

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 第 5 波の COVID-19 流行は大きな被害をもたらしていますが、東京や周辺の県での新規陽性者数はピークを過ぎて減衰に入ったように思われます。全国的にもやや遅れて減衰するか高止まりになっているようです。 政府は …

東京オリパラと第5波感染流行

はじめに 今年の夏は東京オリパラと第5波COVID-19流行の夏でした。図1に、6月23日から昨日(9月5日)までの、全国および東京都における新規陽性者数の推移を示します。7月23日に東京オリンピックが始まる前後から新規陽性者数が急増し、8月半ばから下旬にか…