Dr. TAIRA のブログII

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イングランドのワクチンパスポート導入中止

はじめに

英国BBCは、今日(9月13日)、いわゆるワクチンパスポートについて、ナイトクラブや大規模イベントへの入場に導入する計画は中止すると、保健相サジド・ジャヴィド(Sajid Javid)氏が発表したことを伝えました [1]。それ自体の目的化のために進めるべきではないということらしいです。同時に、ジャヴィド氏は、BBCに対し「適切に検討した結果だが、今後も選択肢の一つとして残る」と述べています。

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本件については、日本語でのニュース [2] も早速伝えられていますが、このブログでは、BBCの報道について翻訳しながらもう少し詳しく紹介したいと思います。

1. BBS報道 [1] の詳細

ワクチンパスポートの計画は、イベント業者や一部の国会議員から批判を受けていたのですが、今月末に導入されると考えられていました。1週間前、ワクチン担当大臣のナディム・ザハウィ(Nadhim Zahawi)氏は、夜の産業を維持するための最良の方法だと述べていました(後述)。

この計画では、クラブやその他の人が集まるイベントに参加するための条件として、二種混合ワクチンの接種、COVID-19の陰性証明、PCR検査陽性後の自己隔離の完了証明などを提示する必要がありました。

この問題に関する状況は以下のとおりです。

・誰がCovidパスポートを必要とするのか、そしてその入手方法は?

・ワクチンパスポートが必要となると、予防接種を受けるのがおっくうになる

スコットランドでは10月1日からワクチンパスポートが開始される

Night Time Industries Associationは、この計画が業界を麻痺させ、ナイトクラブが差別訴訟に直面する可能性があると述べていました。この業界団体は、日曜日のジャヴィド氏の発表を歓迎し、企業がある程度確実な計画を立て、業界の再建に乗り出すことを望んでいると述べました。また、草の根的な活動で会場を保護することを目的とするMusic Venue Trustは、ワクチンパスポートを「問題がある」とし、これが中止されることを歓迎しています。

自由民主党エド・デイビー党首は、ワクチンパスポートを「対立を生むもの、実行不可能で、高価なもの」と形容しています。

The Andrew Marr Showに出演したジャヴィド氏は、「我々は、目的だけのために、あるいは他の人がやっているからといって、物事を進めるべきではなく、あらゆる可能な介入を適切に検討すべきだ」、「日常的な活動をするために、書類を提示しなければならないという考えはまったく好まない」と述べ、「私たちはこの問題を適切に検討し、可能性のある選択肢として残しておくべきではあるが、ワクチンパスポートの計画を進めないことをお伝えしたい」と付け加えています。

ジャヴィド氏は、政府内の議員からの批判を受けて、政府がこの政策について「怖がっている」ことを否定しました。そして、ワクチンの高い接種率、検査、監視、新しい治療法など、「防御の壁」と呼ばれる他の要素があることから、パスポートは必要ないと述べました。

このような、ワクチンパスポートを廃止する動きは、政府による急激なUターンのように見えます。

先週の同じテレビ番組で、ワクチン担当大臣のナディム・ザハウィ氏は、18歳以上のすべての人がそれまでに2回のワクチン接種を受けているだろうから、大勢の人が集まる場所でワクチンパスポート制度を開始するには9月末が適切な時期であり、夜の産業を維持するための「最良の方法」であると述べていました。

インタビューの中でジャヴィド氏は、渡航時のPCR検査を「廃止」したいと考えていて、この問題について助言を求めているとも述べました。また、これ以上のロックダウンは「想定していない」が、「すべてをテーブルから外してしまうのは無責任だ」とも発言しています。さらに、もし英国の最高医学責任者(CMO)が12歳から15歳の子供にワクチンを接種すべきだと勧告した場合、「1週間以内に開始できる」とし、学校はすでに準備を進めていると述べました。

英国の諮問機関であるワクチン接種・予防接種合同委員会(JCVI)は、特定の健康問題を抱える子供を除き、ワクチン接種を行わないよう勧告していますが、最終的な決定権はCMOにあります。

スコットランドでは、イングランドとは異なるアプローチをとっており、10月からナイトクラブや大規模イベントに参加する18歳以上の人々にワクチンパスポートを導入する予定です。ウェールズでは、来週、大臣がこの制度を導入するかどうかを決定します。なお、北アイルランドでは同様の制度を導入する予定はありません

なお、日曜日に発表された最新の政府統計によると、英国では過去28日以内に検査を受けた人のうち、29,173人が新規陽性者となり、さらに56人が死亡しました。

2. ロイターのツイート

ロイターも、英国保健相のワクチンパスポートの断念の表明について、今日、以下のようにツイートしています。

おわりに

日本では、ワクチン完全接種者が5割を超えたこと、少なくとも1回接種では米国と並んだことが報道されています [3]。政府は、感染対策と経済を両立させる鍵となる若者へのワクチン接種率を上げ、ワクチン接種が完了する11月をめどに行動制限を緩和し、施設や飲食店利用におけるワクチンパスポートや検査陰性証明を導入することを基本方針としています [4](日本ではパスポートではなくワクチン・検査パッケージとよんでいます)。

しかし、日本政府の考えや動きを見ていると、どうもワクチン至上主義に走り、行動緩和にセットの経済活動再開に前のめりになっている感があります。つまり、ワクチン接種率や経済再開そのものが目的になっていて、肝心の感染拡大抑制策や医療提供体制の充実が後回しになっているという懸念があります。全国知事会からは、政府の行動緩和策について、国民の気の緩みに繋がるのではないかという懸念が出されています。

英国のジャヴィド氏が言うように、ワクチンの高い接種率、検査、監視、新しい治療法など、「防御の壁」と呼ばれる他の要素があることから、ワクチンパスポートは必要ないとすることは合理的のように思えます。この点でワクチンパスポートの考え一つとっても、英国と日本とでは雲泥の差があるように思えます。日本では検査、追跡、医療提供体制はいまだに当初のレベルから進んでいません。

商業施設や飲食店におけるワクチンパスポートを持つ人と検査陰性証明者を持つ人の混在はそもそもおかしいです。ワクチン接種者は自らを病気から守るのであって、他人に感染させないという保証はありません。一方で、検査陰性証明者は、罹患する可能性はあっても他人に感染させる可能性は低い人です。つまり、COVID-19に対して全く正反対の立場の人たちを混在させるというのが、いま日本政府が考えているパッケージです。

この意味で、米国もフランスも同じ誤りを犯しているように思います。もっとも弱い人は死んでも仕方ないという「死のレベルを受け入れるウィズコロナという考え方に立てばそうなるのかもしれません。

引用記事

[1] Jackson, M.: England vaccine passport plans ditched, Sajid Javid says. BBC News 2021.09.13. https://www.bbc.com/news/uk-58535258

[2] ロイター:英首相、冬に向けコロナ対策発表へ 接種証明は導入中止. Yahooニュース. 2021.09.13. https://news.yahoo.co.jp/articles/20c21a82f2cfd710004916e61436566eda7e17c3

[3] 東京新聞: 全人口の50%超が2回接種完了 米国に並び、欧州を猛追. 2021,09.13. https://www.tokyo-np.co.jp/article/130661

[4] FNNプライムオンライン:「ワクチン・検査パッケージ」で行動制限を緩和 政府が基本方針. 2021.09.10. https://www.fnn.jp/articles/-/236975

                

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