Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

日本人のマスク着用は社会的規範に影響されない

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに COVID-19 パンデミックが始まってからの、日本人のマスク着用率が高いことはよく知られています。政府のマスク着用に関する「個人の判断になりました」という通達があり、COVID-19 の感染症法上の分類が 5 …

長期コロナ症についてわかったこと、わからないこと

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 前のブログ記事(→軽症COVID-19から回復した人のウイルス持続性)でも示したように、COVID-19に感染・回復した軽症患者であっても、SARS-CoV-2 が様々な組織・臓器に持続し、それが長期コロナ症(long COVID…

軽症COVID-19から回復した人のウイルス持続性

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに COVID-19 の特徴の一つは、感染後一定の割合で長期症状に移行すること、すなわち長期コロナ症(long COVID)を発症することが挙げられます。長期コロナ症は、急性期の症状の程度に関わらず発症すると言われ…

COVIDウイルスの体内持続性は何を意味するのか?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに SARS-CoV-2 に感染した人々は、かなり割合(10% 前後)で長期コロナ症(long COVID)に移行するとされています。長期コロナ症とは、米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、COVID-19 に罹患後、数週間、…

酒に弱い人はコロナに防御的?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに お酒に弱い人は、コロナ(COVID-19)に対して防御的な体質を持つのではないかという興味深い研究成果が発表されました。この研究は、佐賀大学医学部環境医学分野などに所属する共同研究チームによるもので、…

A群溶血レンサ球菌感染症の広がりの謎

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) いま日本では、COVID-19流行もさることながら、A群溶血性レンサ球菌 Streptococcus pyogenes (A群溶連菌)による感染症が広がっています。英ガーディアン紙は、日本のこの出来事を、「希少だが危険な細菌感染症が日…

川戸の森問題を考える

カテゴリー:その他の環境問題、公園と緑地 はじめに 千葉市にある川戸の森は、長年地域住民や市民に親しまれてきた緑地であり、2016 年には市民緑地に指定されました。市民緑地とは、都市緑地法に基づき、市と土地所有者が契約締結し、300 平方メートル以上…

子どものCOVID感染がオミクロン以降増えた理由

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに COVID-19 パンデミックが始まった当初、原因ウイルスである SARS-CoV-2 の感染は、子どもより大人の方が起こりやすいことが世界中で報告されました。これは、インフルエンザが子どもが罹りやすいのと対照的…

コロナ禍で反ワクチン論にハマった人の政治的傾向

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに COVID-19パンデミックでは、人類史上初の mRNA ワクチンが緊急承認され、世界各国で国策としてのワクチン接種プログラムが実施されました。原因病原体であるSARS-CoV-2は、自然感染とワクチン獲得免疫を逃避…

COVID-19が重篤炎症に至る謎を解く鍵はウイルスの断片

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに SARS-CoV-2 によって引き起こされる COVID-19 は、当初考えられていたような単純なる呼吸器疾患ではなく、全身性の疾患として認識されるに至っています。そして、しばしな重篤な炎症をもたらしたり、最悪死…

BA.2.86は親系統より病原性が低い?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 現在、 日本では COVID-19 の第10波が襲来しています。主体となっている SARS-CoV-2 はオミクロン BA.2 を親系統とする BA.2.86 からさらに派生した JN.1 変異体です。JN.1 は免疫逃避と感染力が強化されて…

永遠のCOVID

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 2024年を迎え、世界保健機構(WHO)は、COVID-19 などに関わる世界的な公衆衛生問題についての現状と見解を発信しました [1]。一言で表せば、COVID-19 パンデミックは継続中であり、この危機的状況に警鐘を…

SARS-CoV-2の高度変異体 JN.1はより重篤な疾患を引き起こす

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 現在、世界的に SARS-CoV-2 の高度変異型である JN.1 による COVID 流行が起きています。日本でも JN.1 が増加しつつあり、第10波が本格的になりました。特に大地震で被災した地域では、インフルエンザとと…

2024年頭にあたってー原発はそれ自体が戦争

カテゴリー:日記・その他 COVID-19 パンデミックが始まって以来、年頭にこのパンデミックの行方を考えるのが恒例になりました。今年も COVID-19 や SARS-CoV-2 に関する最新文献を参照しながら、いろいろと考察で頭を巡らしていたら、突然スマートフォンの…

感染症とCOVID-19 (2024年)

5月↓ 日本人のマスク着用は社会的規範に影響されない 4月↓ 長期コロナ症についてわかったこと、わからないこと 軽症COVID-19から回復した人のウイルス持続性 COVIDウイルスの体内持続性は何を意味するのか? 3月↓ 酒に弱い人はコロナに防御的? A群溶血レン…

地球環境変動とスピルオーバー感染症の脅威

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 今月 8 日付けで、BMJ Global Heath 誌に、スピルオーバー(異種間伝播)感染症(→スピルオーバー:ヒトー野生動物間の新型コロナ感染 )に関する一つの論文が掲載されました [1](下図)。今後、人為的要因…

認知の霧の中にいるという米国人が増えている

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 今朝、コーヒーを飲みながら、ウェブ記事を探索していたら、New York Times(NYT)の記事 [1] が目に留りました。物事を考えられない、思い出せないという認知の霧の中にいる米国人が増えているという記事です(下図…

豊橋公園の新アリーナ計画問題

カテゴリー:その他の環境問題、公園と緑地 、社会・政治・時事問題 はじめにー豊橋公園の概要 豊橋公園(とよはしこうえん)は、愛知県豊橋市今橋町にある緑豊かな城址公園です。豊橋駅から北東方向に歩いて30 分弱(約 1.5 km)の距離にあります。広さは 2…

感染対策としての手洗いの効果

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 手洗い、アルコール消毒などの手指衛生は非医薬的介入(non-pharmaceutical intervention, NPI)による感染症予防策の基本の一つです。手を薬用石けんで洗えば、手に付いた病原体を不活化できると同時に洗い…

日本の研究はもはや世界に通用しない-理由はここにある

カテゴリー:科学技術と教育 日本の科学研究力の低下が言われて久しいですが、今回ネイチャー誌に、サイエンスライターAnna Ikarashi(五十嵐杏南)氏による「日本の研究はもはや世界に通用しない」という記事が掲載されました [1](下図)。強力な研究労働…

戦略的マスクキングと世界標準から外れた日本のマスク事情

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 日本を含めて東アジアの国々は、一般的に、欧米に比べて衛生対策としてのマスク着用に関する意識が、個人レベルで高い傾向があります。東アジアの国では、普段からマスクの習慣がある一方、欧米ではマスクは…

感染症流行に際して免疫負債論を考える

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに フランスの医師らによって提唱された「免疫負債(immune debt)」仮説 [1] は、閉鎖的生活などによって長らく病原体に曝されない状態が続くと免疫が低下し、社会生活が正常に戻ったときに感染症に罹りやすく…

「給食時の黙食がコロナ感染に与える影響」研究の問題点

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 最近、「学校給食時の黙食がCOVID-19の感染に与える影響」という研究が報告され [1, 2]、ウェブ記事やSNS上でも取り上げられて話題になっています [3]。これは、高橋遼氏(早稲田大学准教授)、津川友介氏(…

長期コロナ症は血液バイオマーカーで識別診断できる

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに SARS-CoV-2に感染して起こるCOVID-19では、たとえ急性期症状が回復した後でも、長期コロナ症(long COVID)に移行することがあります。日本では罹患後症状(post-COVID-19 conditions)とか、より一般的には…

SARS-CoV-2感染は動脈硬化を促す炎症反応を引き起こす

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) SARS-CoV-2 は呼吸器系ウイルスとして知られていますが、このウイルスが原因で起こる COVID-19 は、全身性疾患の感染症であり、無症候性感染から急性呼吸困難、多臓器不全、死亡に至る多様な臨床症状によって特徴づけ…

文科省のガラパゴス的マニュアルが校内感染を促す

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 感染防止対策や公衆衛生の取り組みにおいては、基本的に「何をなすべきか」が一義的に求められ、それをいかに科学的に、合理的に伝えることが重要です。ところが、日本政府や省庁が繰り出す基本的ガイドライ…

季節外れのインフルエンザ流行の謎

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに この夏、COVID-19の第9波流行が拡大しました。9月に入り、患者数のピークは過ぎたようにも思えますが、まだ高いレベルにあり、油断できません。加えて、季節外れのインフルエンザも拡大し、全国的に患者数が…

感染症法を崩壊させた政府ーそして第9波流行

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 2023.9.12更新 第9波の COVID-19 流行が収まる気配がありません。今は感染者数も死者数も把握されていませんので、受診した患者数の記録で推測するしかありませんが、モデルナのサイトで公表されるデータに基づけば、…

海外メディアが伝える処理水放出に関する科学者の見解

カテゴリー: その他の環境問題 はじめに 日本は福島原発事故跡から発生する放射能汚染水の処理水(ALPS処理水)の海洋放出を開始しましたが、この前後において、海外のメディアが盛んに関連記事を配信しています。それらの中には海洋放出に対する海外の科学…

放射能汚染処理水放出と今後の影響

2023.8.30更新 カテゴリー:その他の環境問題 カテゴリー:社会・政治・時事問題 はじめに 日本政府と東京電力は、8月24日、福島第一原発事故跡の燃料デブリから生じる放射能汚染水について、その処理水(ALPS処理水)の海洋放出を開始しました。処理水放出…