Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

2020-01-01から1年間の記事一覧

流行蔓延期の対策ー変異ウイルスと市中無症状感染者の把握

はじめにー現在の流行状況 今日(12月26日)、東京都におけるSARS-CoV-2の新規陽性者数は949人となり、過去最多を更新しました。周辺の神奈川県、埼玉県、千葉県でもこの数日で最多を更新し、かつ一頃より急激な増加を示しています(図1)。 図1. 首都圏4都…

菅政権の危機管理能力の欠如がもたらす感染爆発

はじめに 日本では本格的な冬を迎え、新型コロナウイルス感染者が急増しています。お隣の韓国でも新規陽性者が増えていますが、日本の感染者増加は、東アジア・西太平洋先進諸国の中でも突出しており、最悪です(図1)。 図1. 日本と東アジア・西太平洋先進…

コロナ禍で気になる若者の移動とマスク

一昨日(12月3日)、新型コロナウイルス感染症対策対策アドバザリーボードの会合が開かれました。その時の資料を見ていて気になったというか、やはりというか、若者の移動が主体的に二次感染を引き起こしているという事実についてです。今朝の日本テレビ「ウ…

経済推進と重症者数重視の影に隠れる死亡者の実態

はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、第1波に比べて第2波以降は患者が早く見つかるようになり、医療的な対処法も改善されて重症化をより防ぐことができるようになったと言われています。そして、軽症のうちに対応できることによって、致死率…

高性能マスクについて

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 前回のブログ記事(→あらためてマスクの効果について)では、マスクの種類による飛沫防止、エアロゾル防止効果(排出、侵入)について紹介しました。新型コロナウイルス感染症対策としてのマスク着用については、一般…

あらためてマスクの効果について

2020.11.28: 08:07更新 はじめに 3月18日の本ブログ記事「新型コロナウイルスの感染様式とマスクの効果」で、感染リスクを下げる効果としてのマスク着用の重要性を述べました。当時は第1波が立ち上がり始めた頃で、世界保健機構WHOがマスクの効果は薄いとい…

無症状者から広がるウイルス感染とGoToトラベルへの示唆

2020.11.24: 20:08更新 はじめに 今朝(11月24日)のテレビ朝日「モーニングショー」を観ていたら、コメンテータの玉川徹氏が、無症状者(無症候性+発症前無症状)からの新型コロナウイルスの感染についてコメントしていました。無症状者が媒介するウイルス…

マスコミが報じない東アジアの中の日本の流行状況

はじめに 新聞、テレビなどのマスコミは、連日、新型コロナウイルス感染症COVID-19の感染急増について報道しています。自国における感染拡大で、そこにばかり目が向いている状況ですが、ほとんど報じられていないのが、東アジアの周辺の諸国と比較した日本の…

為政者と専門家の想像力のなさが感染拡大を招く

2020.11.20. 20:55更新 はじめに 11月19日、東京では新規陽性者が初めて500人を超えて534人となり、全国では2388人を数え、これまでの最多となりました(図1)。これから、しばらく各地で記録が更新されていくでしょう。個人的には緊急事態宣言発出の段階だ…

mRNAを体に入れていいのか?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 米国の製薬企業モデルナ社は、いま開発中の COVID-19 ワクチン(mRNAワクチン)について、「94.5% の有効性がある」とする暫定的な結果を発表しました。モデルナ社は、効果の割合は今後、臨床試験が進むにつれて変わる可能性…

連日の千人超えは危険信号

2020.11.08:00:05更新 今日(11月7日)の全国の新型コロナウイルスSARS-CoV-2新規陽性者は、1,331人になりました(図1)。一昨日の1,048人、昨日の1,145人と3日連続の1,000人超えであり、5都道府県で100人を超えています。今日は土曜日で、米国大統領選挙の…

冬に向けて大流行の兆し

はじめに 今朝(11月1日)のTBSテレビ「サンデーモーニング」で、ヨーロッパにおいて、そして国内では北海道や宮城県において、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の新規陽性者が増加していることを伝えていました。陽性者数が増えている要因として気温低下や湿度…

COVID-19パンデミックの科学的コンセンサスー私たちは今行動すべき

2020.10.18: 23.49更新 10月15日、医学雑誌ランセット(The Lancet)に、"Scientific consensus on the COVID-19 pandemic: we need to act now"というタイトルの書簡記事が掲載されました [1](図1)。このブログのタイトルはそれを邦訳したものです。この…

"Long COVID"という病気

カテゴリー:感染症とCOVID-19 はじめに 昨日(10 月 11 日)、NHK のテレビ番組「令和未来会議」で、「COVID-19 流行下において、感染拡大防止と経済活動のバランスをどう考える?」というテーマで、討論会が行なわれました。参加者は、大学教授、医師、感…

世界と比べた日本の今の流行ー第1波から何を学んだのか?

2020.10.10: 08:15 a.m. 更新 10月に入り、日本はついに、新型コロナウイルス感染症COVID-19の累計陽性者数で中国を抜いてしまいました。10月6日、この件についてツイートしましたが↓、10月8日0:00現在(厚生労働省)の累計陽性者数は 86,571人、累計死者数…

菅総理大臣の学術会議任命拒否に対する海外の反応

2020.10.08: 08.06 a.m. 更新 はじめに 2020年10月1日、日本学術会議総会において推薦された新会員105名の内の6名が、菅首相によって任命を拒否されたことがわかりました。これに対し、日本学術会議は首相あてに、任命拒否の理由の説明と新会員候補6名の任命…

今年の冬の新型コロナ・インフル検査・診断は大丈夫?

はじめに 今年の冬は、新型コロナウイルス感染症 COVID-19 とインフルエンザの同時流行が懸念されています。しかも、新型コロナについては、今まで以上の流行になる可能性があります。それに備えて、検査体制の拡充やインフエンザワクチンの接種を促すメッセ…

コロナ禍の社会政策としてPCR検査

はじめにーソフトバンクの試み ソフトバンクグループ株式会社の孫正義社長は、2020年9月24日、子会社として新型コロナウイルス検査センター株式会社(千葉県市川市 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター国府台病院内)を本格稼働させたことを発表しま…

菅政権の新型コロナ対策の危うさ

2020.09.20: 13:45更新 はじめに 菅義偉内閣が、9月16日、発足しました。菅総理自身は「安倍政権の継承」を表明し、「国民ために働く内閣」というスローガンも打ち出しました [1]。主要閣僚は実績と安定を重視する守りの布陣と言えます。ただ、派閥均衡を意…

巷に氾濫する新型コロナのPCR検査に関する誤謬記事

カテゴリー:感染症とCOVID-19 2020.09.09: 10:15 a.m. 更新 このところ、相変わらずというか、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の PCR 検査に関するデマおよび詭弁を載せたウェブ記事を見かけることが多くなりました。このブログでは、最近のこの手の2つ…

新型コロナについて詭弁を続けるウェブ記事–2

はじめに 先のブログ(→新型コロナについて詭弁を続けるウェブ記事–1 超過死亡はない?)でも紹介しましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やPCR検査について詭弁を続けるインターネットメディアとしては、BuzzFeed Japan が有名です。これと並んで…

新型コロナについて詭弁を続けるウェブ記事–1 超過死亡はない?

はじめに インターネットメディアであるBuzzFeedの岩永直子氏は、新型コロナウイルス感染症COVID-19に関する記事をシリーズで流しています。タイムリーな話題を記事にすることはいいのですが、問題はその中身です。これまでの全部の記事が、いわゆる政府より…

ブログ開設1年に思う

本ブログの読者の方にはいつも感謝しております。 今日(9月2日)Hatenaより以下のメールが届き、まったく念頭になかったのですが、このブログを開設して1年が経ったことに気づきました。思えばそれまで2年近く続けていたYahooブログがプロバイダーの都合で…

学会の検査の捉え方と1日20万件の検査の不思議

はじめに 安倍総理大臣は、2020年8月28日、辞意表明を行うとともに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のパッケージの中身の一つとして1日20万件の検査を行なうことを発表しました。現在の検査能力と比べると、20万件/日という検査数はかなり増える…

新型コロナ流行の再燃と失敗を繰り返す日本

はじめに 安倍総理大臣は、8月28日、記者会見で辞意表明すると同時に新型コロナウイルス感染症に対する対策の見直しをパッケージとして発表しました。しかし、相変わらずの成果・検証抜きで新たな目標設定を行なうやり方であり、実効性は不明です。つまり、…

コロナ禍で氾濫するPCR検査に関する詭弁

はじめに コロナ禍の日本において顕著になったことの一つとして、PCR検査に関する詭弁やデマの流布があります。そして、これらがいわゆる感染症対策の中心を担う"感染症コミュニティ"から発信されることで、異常とも言える混乱を招いてきたという事実があり…

PCR検査の偽陰性率を推定したKucirka論文の見方

はじめに 米国ジョンズ・ホプキンズ大学のL. M. Kucirka博士らの論文"Variation in false-negative rate of reverse transcriptase polymerase chain reaction–based SARS-CoV-2 tests by time since exposure"が、Annals of Internal Medicine 誌オンライン…

新型コロナウイルスに対するBCGワクチンの有効性に関する新たな知見

はじめに 米国の研究チームによる興味深い論文が、2020年8月13日、電子出版されました [1]。どこが興味深いかと言うと、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のエンベロープのタンパク質が結核菌やらい菌の仲間であるマイコバクテリア(mycobacteria)の抗原タンパ…

発症前から発症時の感染者のウイルス伝播力が強い?

はじめに 先日、韓国の研究チームによる「SARS-CoV-2の無症候性感染者と発症者のウイルス保持量はあまり変わらない」とする研究成果 [1] を紹介しました(→無症状感染者は発症者と同じウイルス量を保持する)。そしたら、今度は英国イングランド公衆衛生局(…

無症状感染者は発症者と同じウイルス量を保持する

はじめに 新型コロナウイルス感染症においては無症状の感染者の割合が高いことは常識になっていますが、無症状者が発症者と同じだけのウイルス量を保持しているか、そしてどの程度の感染力(伝播性)を有しているかということについてはよくわかっていません…