Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

#新型コロナウイルス

長期コロナ症についてわかったこと、わからないこと

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 前のブログ記事(→軽症COVID-19から回復した人のウイルス持続性)でも示したように、COVID-19に感染・回復した軽症患者であっても、SARS-CoV-2 が様々な組織・臓器に持続し、それが長期コロナ症(long COVID…

軽症COVID-19から回復した人のウイルス持続性

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに COVID-19 の特徴の一つは、感染後一定の割合で長期症状に移行すること、すなわち長期コロナ症(long COVID)を発症することが挙げられます。長期コロナ症は、急性期の症状の程度に関わらず発症すると言われ…

COVIDウイルスの体内持続性は何を意味するのか?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに SARS-CoV-2 に感染した人々は、かなり割合(10% 前後)で長期コロナ症(long COVID)に移行するとされています。長期コロナ症とは、米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、COVID-19 に罹患後、数週間、…

酒に弱い人はコロナに防御的?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに お酒に弱い人は、コロナ(COVID-19)に対して防御的な体質を持つのではないかという興味深い研究成果が発表されました。この研究は、佐賀大学医学部環境医学分野などに所属する共同研究チームによるもので、…

子どものCOVID感染がオミクロン以降増えた理由

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに COVID-19 パンデミックが始まった当初、原因ウイルスである SARS-CoV-2 の感染は、子どもより大人の方が起こりやすいことが世界中で報告されました。これは、インフルエンザが子どもが罹りやすいのと対照的…

BA.2.86は親系統より病原性が低い?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 現在、 日本では COVID-19 の第10波が襲来しています。主体となっている SARS-CoV-2 はオミクロン BA.2 を親系統とする BA.2.86 からさらに派生した JN.1 変異体です。JN.1 は免疫逃避と感染力が強化されて…

永遠のCOVID

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2024年) はじめに 2024年を迎え、世界保健機構(WHO)は、COVID-19 などに関わる世界的な公衆衛生問題についての現状と見解を発信しました [1]。一言で表せば、COVID-19 パンデミックは継続中であり、この危機的状況に警鐘を…

感染症とCOVID-19 (2024年)

5月↓ 日本人のマスク着用は社会的規範に影響されない 4月↓ 長期コロナ症についてわかったこと、わからないこと 軽症COVID-19から回復した人のウイルス持続性 COVIDウイルスの体内持続性は何を意味するのか? 3月↓ 酒に弱い人はコロナに防御的? A群溶血レン…

戦略的マスクキングと世界標準から外れた日本のマスク事情

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 日本を含めて東アジアの国々は、一般的に、欧米に比べて衛生対策としてのマスク着用に関する意識が、個人レベルで高い傾向があります。東アジアの国では、普段からマスクの習慣がある一方、欧米ではマスクは…

「給食時の黙食がコロナ感染に与える影響」研究の問題点

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 最近、「学校給食時の黙食がCOVID-19の感染に与える影響」という研究が報告され [1, 2]、ウェブ記事やSNS上でも取り上げられて話題になっています [3]。これは、高橋遼氏(早稲田大学准教授)、津川友介氏(…

SARS-CoV-2感染は動脈硬化を促す炎症反応を引き起こす

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) SARS-CoV-2 は呼吸器系ウイルスとして知られていますが、このウイルスが原因で起こる COVID-19 は、全身性疾患の感染症であり、無症候性感染から急性呼吸困難、多臓器不全、死亡に至る多様な臨床症状によって特徴づけ…

文科省のガラパゴス的マニュアルが校内感染を促す

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 感染防止対策や公衆衛生の取り組みにおいては、基本的に「何をなすべきか」が一義的に求められ、それをいかに科学的に、合理的に伝えることが重要です。ところが、日本政府や省庁が繰り出す基本的ガイドライ…

感染症法を崩壊させた政府ーそして第9波流行

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 2023.9.12更新 第9波の COVID-19 流行が収まる気配がありません。今は感染者数も死者数も把握されていませんので、受診した患者数の記録で推測するしかありませんが、モデルナのサイトで公表されるデータに基づけば、…

メディアも政府も口にしないコロナに毎週人々が感染する

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 先日、エックス(X)(旧ツイッター)のタイムラインに、ジョン・スノウ・プロジェクト(Jons Snow Project, JSP)のポストが目にとまりました(以下)。"International Guidance on Preventing Long Covid"…

下水データが示す第9波流行の動向

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに いまCOVID-19の第9波流行が拡大しています。しかし、政府はこの感染症の5類移行に伴って、従来の疫学情報を取得・公表することを止めてしまいましたので、国民は第9波流行がどの程度の規模で起こっているの…

エリスとよばれるCOVID-19ウイルスEG.5.1がまん延

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) いま日本ではCOVID-19の第9波流行が拡大しています。その拡大の原因となっているのがEG.5.1変異体(通称エリス)です。このウイルスはいま、東アジア、ヨーロッパ、米国でも流行り始めていて、新しい流行の波として捉…

歴史に学ぶ、コロナ後で起こること

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19の世界的な流行は4年目に入り、急性パンデミックへの対応から長期的集団障害の問題への取り組みに焦点が移りつつあります [1] 。COVID-19では、急性期の症状に続く長期の症状が一定の割合で発生する…

長期コロナ症が子どもに及ぼす精神的・心理的影響

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19パンデミックは4年目に突入し、5月に世界保健機構(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を終了した一方で、SARS-CoV-2はオミクロン変異体からさらに感染力と免疫逃避力を増し…

COVID-19の年代別死者数の推移

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19パンデミックでは、日本は流行波が襲来する度に健康被害と犠牲を大きくしてきたのは周知の事実です(図1)。特にオミクロン波が訪れて以降、感染者数が爆増し、第8波で死者数は最多となりました。こ…

日本での第9波のなか、下水データは米国での新たな流行の始まりを示す

カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年) はじめに 今日、COVID-19に関する興味深いウェブ記事 [1] に目が留りました。「日本では第9波流行が席巻する中、下水データは米国での新たな流行の始まりを示す」(As ninth COVID wave sweeps Japan, wastewater da…

感染対策の緩みとともに襲来した第9波流行

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 日本ではCOVID-19流行の第9波が襲来しています。この1週間余りの政府のSNS上の発信、メディアの報道、専門家の発言などから、流行の現状を考えてみましょう。そこから見えてくるのは、流行の実態と政府・メディアの認…

子どもが感染を拡大させる

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 米国ボストン小児病院などと台湾の共同研究グループは、米国の約85万世帯の COVID-19 感染の70.4%が子どもから広がっているという研究結果を報告しました。この報文は、6月1日付けの JAMA Network Open に…

都道府県で異なるオミクロン死亡割合の要因は?

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2023年5月8日、感染症法の分類における位置づけが5類になりました。この措置に伴って、様々な疫学・感染情報の報告が制限あるいは中止されることになりました。そ…

サーベイランス検査の感染予防効果

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19感染症の伝播・感染予防にサーベーランス(監視的)検査が有効であることは、このパンデミックの当初から世界的に主張されてきました。これは、無症状者(発症前の感染者や無症候性感染者)が病気の…

コロナ罹患後の自己免疫疾患

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに COVID-19の特徴の一つとして、罹患後に自己免疫疾患や長期症状を発症することが知られています。これらについては多くの症例報告や小規模集団を対象とした研究がありますが、その全貌は明らかにされていませ…

新型コロナは接触感染する

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 現在、SARS-CoV-2の主要感染様式は空気感染(エアロゾル感染)であるというのは科学的常識になっています。従来言われていた、接触感染や飛沫感染は少ないか稀であるということも認識されています。大きな飛…

子どもの long COVID について保護者が知っておくべきこと

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、気をつけなければいけないのが long COVID(ここでは長期コロナ症と呼称)です。厚生労働省は罹患後症状と呼んでいて、日本では一般的にいわゆるコロナの後…

SARS-CoV-2感染はDNAを損傷させる

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) はじめに 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、日本ではインフルエンザ並みとか風邪のようなものだという声がしばしば聞こえてきますが、大きな誤解です。いまだに当初の呼吸器系の疾患という先入観から抜…

遮断されるパンデミック情報

カテゴリー:感染症とCOVID-19 (2023年) 米ジョンズ・ホプキンス大学(The Johns Hopkins University)は、COVID-19パンデミックが始まって以来、公に貴重な流行情報を提供してきました。しかし、今年3月10日でこの情報提供を終了したようです。NHKもニュー…

感染症法を理解しない日本社会

カテゴリー:感染症とCOVID-19(2023年) はじめに 岸田首相は、1月20日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上の分類について、現在の2類相当から季節性インフルエンザと同等の5類へ引き下げることを表明しました。この春の実現について専門家…