Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

幹上のアカボシゴマダラの越冬幼虫

今日はオオムラサキの越冬幼虫の探索に行きました。とは言っても訪れたところはすでに絶滅したとされている地域であり、数年前ボロボロの翅になったオオムラサキの成虫を目撃したことだけをよりどころにした探索です。
 
探索地域はいわゆる里山の環境であり、クヌギやコナラを主体とした雑木林がまだいたるところに残っています。写真1は雑木林に沿って群生するエノキの高木です。ダメ元で周辺の17本の成木を探してみましたが、やはりオオムラサキは見つかりませんでした。
 
イメージ 1
写真1
 
さらに周辺1 km圏内にはエノキの幼木や低木があって、私が定点観察しているものも含まれます。これらの幼木・低木にはもっぱらアカボシゴマダラの越冬幼虫がへばりついていましたが、すでに大部分が幹上から姿を消しました。
 
幹上に残っている数少ないアカボシゴマダラの越冬幼虫の一つ写真2に示します。
 
イメージ 2
写真2
 
インターネット上でもしばしば散見される情報として、「アカボシゴマダラはエノキの幹上でも越冬するのでもっぱら落ち葉の下で越冬するゴマダラチョウに対して食草にはやくたどりつく優位性がある」というのがあります。
 
確かにアカボシゴマダラの越冬幼虫は幹上でも見られますが、私がこれまで東京、千葉、埼玉で定点観察した中では2月初旬の段階での幹上越冬率は5%以下とわずかです。ゴマダラチョウと同じく大部分が落ち葉の下で冬を過ごしています。
 
一昨日も寒波がやってきましたが、そのせいか今日見たら幹枝から地面に移動した越冬幼虫もけっこういました。2月になってもまだ移動しています。結局最後まで幹上で越冬するアカボシゴマダラは数%ということになりそうです。幹上越冬によるゴマダラチョウに対する優位性は無視はできませんが、圧倒的に有利ということにはならないのではと思います。
 
今日は典型的なアカボシゴマダラの越冬幼虫のほかに、非典型的な形態を持つ個体も幹上で見つかりました(写真3)。この個体は胴体や頭の突起がゴマダラチョウに酷似しており、かつ尾状突起が開いているので(矢印)一瞬ゴマダラチョウかと思いました。
 
今日見つけたゴマダラチョウを比較として写真4に示します。写真3の個体は、1)背中の3列目の突起が丸っこい(ゴマダラチョウは逆三角に近い)、2)モスグリーンの色(ゴマダラチョウは灰色っぽい)、3)尾状突起の先が同色(ゴマダラチョウはピンクっぽく変わる)などの特徴を持ち、幼木の幹上にいることからアカボシゴマダラと思われます。
 
イメージ 3
写真3
 
イメージ 4
写真4
 
ちなみに写真4ゴマダラチョウは頭の突起対の左側が短く(上矢印)、背中の3列目の突起の左側がありませんでした(下矢印)。