Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

今日のアカボシゴマダラ


今日は、雑木林と畑が広がる里山風景の観察ポイントにアカボシゴマダラのフィールド調査に向かいました。

農道沿いにエノキの幼低木が並んでおり、10年程前からアカボシの発生が見られる場所です。以前はたくさんのエノキがあったのですが伐採が進み、今は5本の小さなエノキを残すのみとなりました。

12月に入って落葉が進み、写真1のように魚の骨のような特有の枝ぶりを見せています。このエノキは樹高約2 mですが、6頭の越冬型幼虫が幹にへばりついていました。写真中央下に小さく白く見えているのはサナギの抜け殻です。

イメージ 1
写真1

写真1のエノキから5 mほど離れたところには樹高1.4 mのエノキ幼木があります(写真2)。この木の幹上には10頭以上の幼虫が見られました。これまで多数のエノキを見てきましたが、樹高と幹上に存在する幼虫数の間の相関はないようです。

イメージ 2
写真2

写真2のエノキの幹の一部を示します(写真3)。この木では20-50 cmの高さに越冬型幼虫が集まってへばりついており、写真上では6頭見ることができます。アカボシゴマダラ特有の生態です。

イメージ 3
写真3

この農道沿いのエノキの根元からは、これまでゴマダラチョウの幼虫はまったく見つかっていません。しかし、ここから百メートルほど進んだところにある民家と神社にエノキの中高木が数本生えており、そこではゴマダラチョウのみを目撃しています。

前のページでも紹介したように、私はエノキ低木下でアカボシとゴマダラチョウの幼虫の共存を確認していますが(https://blogs.yahoo.co.jp/rplelegans130/16575443.html)、これはむしろ少数の例です。これまでもしばしば指摘されていますが、どうやら、アカボシとゴマダラチョウにはエノキの選択性の違いと棲み分けがあるようです。

今日も、上記の民家と神社のエノキを観察しに行きました。ところが、何ときれいに掃除されていて根元の落ち葉がすっかりなくなっていました。先月まではあったのですが、誠に残念です。清掃で落ち葉除去というのは致し方ないのですが、これまでも何度も経験していて、ゴマダラチョウのために何とかならないのかとその都度考えてしまいます。

エノキの伐採と落ち葉の清掃・除去、これがゴマダラチョウにとって、最も脅威であることを、今日また思い知らされました。