キノコは、動物でも植物でもない風変わりな生物ですが、食用になる種もたくさんあって私たちの生活にとても馴染みが深いものです。私はキノコにはそれほど詳しくはありませんが、生物学を専門としてきた職業柄、山の中や公園を歩くときには、地面や木の幹に生えているキノコによく目が行きます。
昨日公園内で、同じ種類と思われるキノコが辺り一帯に生えているのを目にしました(写真1)。オオオニテングタケ(大鬼天狗茸、’Amanita grandicarpa’)のようです。以前にもこのキノコを見たことはありますが、これほど広範囲に密生しているのは初めて見ました。
写真1
インターネット情報によれば、オオオニテングタケはまだ図鑑にも載っていない比較的新しい種のようで、シイやカシ等の広葉樹林地上に、ときとして巨大なキノコをつくるとあります。テングタケの仲間だけに毒の有無が気になります。食べたという情報もありますが、少なくとも美味しくはないようです。
ところで、キノコは生物の分類では、形態的には「菌類」というカテゴリーに属します。この菌類は小さなカビから大きなキノコも含んでいて、その境界は曖昧です。とりあえず、直接目に見えるものがキノコ、目に見えないものをカビと思ったらいいでしょう。もっともカビも集落(コロニー)をつくると、目に見えるようになりますが。
図1に、生物の大まかな分類およびキノコとカビとの分類学的関係を示します。私たちの目では直接見ることのできない、顕微鏡下でのみ目視できる生物が「微生物」(microorganisms) ですが、同じ菌類であってもカビは微生物であり、キノコは微生物ではないということになります。また、微生物は基本的に単細胞で生きることができます。
なお、図1には菌類とは別に「酵母」を入れていますが、菌類と酵母の境界も曖昧であり、菌類の仲間として包括して分類されることも多いです。形態という見た目で見た場合は、図1のようになりますが(ただし原核生物のアーキアと細菌は形態では区別できない)、科学的な分類ではゲノム(DNA)レベルでの違いを見る必要があります。
図1. 生物の大まかな分類、微生物のカテゴリー、および菌類としてのカビとキノコとの関係