Dr. TAIRA のブログII

環境と生物、微生物、感染症、科学技術、生活科学、社会・時事問題などに関する記事紹介

学校の部活動


今朝のNHKあさイチでは、中学校の部活動を取り上げていました。参加の強制や教員の負担の問題です。それを観ながら自分の中学校時代の部活(昔の言い方ではクラブ活動)を思い出しました。

私は公立中学時代、二つの運動部(体操、サッカー)と一つの文化部に入って活動していました。学校の規則では原則一つの部に集中することになっていたと思いますが、先生や周辺からは(親も含めて)何も言われませんでした。「自分でやりたいならやりなさい」という感じだったと思います。

複数の部活が可能だった理由の一つは、体操部の顧問の先生が長期間不在になり、生徒の自主練習に任せられていたことです。顧問の先生やコーチがいないので、生徒自身で話し合いながら練習時間や練習メニューを決める必要がありましたが、逆にすべてを自分たちで決定できる自由さがありました。近くの高校の練習に出向いては、いろいろアドバイスももらいました。

2番目の理由が、サッカー部の練習が短期集中型で、普段週2日の練習時間であったことです。地区の大会前になると毎日練習があったように思いますが、両方の運動部での練習が重なるときは、顧問の先生と相談して時間を調整するか、自主的に日曜日に出て練習を行っていました。ちなみに、日曜日は普段学校全体で部活を休んでいたように思います。

3番目の理由は文化部に関することですが、体操部、サッカー部の生徒の中で趣味を同じくする仲間(昆虫が好きな仲間)が集まって、昆虫部を創設することを学校に提案したことです。幸いこの提案は認められました。自分たちが創ったクラブなので、この文化部と運動部の時間調整は自分たちで自由に行うことができました。日曜日や夏休みになると部員で近くの山へ採集や観察に出かけていました。

複数の部活で各々に割く時間は十分とは言えないまでも中途半端になることはありませんでした。むしろ、きわめて時間を有効に使い、効率的にかつ自主的に活動できたのではないかと思います。

その結果、体操部では県大会4位になれましたし、昆虫部では県のコンクールで特別賞をもらうことができました。サッカーも市内大会では優勝し、地区大会に駒を進めることができました。

このような結果もありますが、何よりも大事なことは自分たちで物事を決め、判断する能力と、みんなで活動する楽しさを味わう感性がこの時期に養えた気がすることです。また、部活に参加しない生徒も少なからずいて、学校の部活自身に自由な雰囲気と寛容性があったように思います。

あと、普段の部活ではもちろんのこと、練習試合や大会に保護者が出てくることはありませんでした。

翻って、現在の部活動は様変わりしたように思います。もちろん昔の私たちの時代とは比べようもないのですが、それでも私たちが経験したような大らかさ(あえて悪く言えばいい加減さ)と寛容性がなく、より組織的でかつ1位を取ることを目標とするような競技としてハイレベルな部活動になっているような気がします。

そして、そのラインで部活に対する教員と保護者の関わりが半端なく強くなっているように感じます。

あさイチの放送では、米国や英国と比較しながら、学校の部活が日本独自の活動スタイルであることや、部活に時間を割く教員の過重負担、自発的参加と言いながら実質強制になっていることなどの問題を取り上げていました(図1)。

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図1. 日本における部活動の良いところと悪いところー米国、英国との比較
(2018.5.9 NHKあさイチより改変)

日本の部活では原則的に全員参加で、活動の場が安く提供されていることに特徴があります。このような形態は世界的にも珍しいです。米国では少数エリートの活動として学外でそれを行いますし、英国では公立学校にその場がなく、お金がある私立校で気軽に楽しむ活動となっています。

日本での部活の問題は、本来の主旨と離れてその活動そのものが過大に目的化していることがあります。試合に勝つことや有名校になることが目的化することで、顧問、指導者、保護者、そして生徒自身が一丸となって前のめりに進む姿が生まれ、そこからさまざまな問題が派生しています。

このような問題への対策として、各地の教育委員会は週休2日制を勧めているようですが、逆に保護者が試合での勝利にこだわるあまり、部活の練習を減らすなと言っている場合もあるようです(図2)。

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図2. 部活の週休2日制に対する保護者の反発の問題(2018.5.9 NHKあさイチより)

あらためて各地の教育委員会の部活に関する方針を確認してみました。以下に、例として東京都教育委員会の運動部活動の在り方に関する方針を示します。

知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」を育む、「日本型学校教育」の意義を踏まえ、生徒がスポーツを楽しむことで運動習慣の確立等を図り、生涯にわたって心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力の育成を図るとともに、バランスのとれた心身の成長と学校生活を送ることができるようにすること
生徒の自主的、自発的な参加により行われ、学校教育の一環として教育課程との関連を図り、合理的でかつ効率的・効果的に取り組むこと
・ 学校全体として運動部活動の指導・運営に係る体制を構築すること


上記の「知・徳・体のバランスのとれた生きる力を育む...日本型学校教育の意義」の意味は今ひとつよくわかりません。削除してもいいような部分です。スポーツに画一的な徳や精神性を求めると逆に不健康になります。

2項目の自主的、自発的参加は実質形骸化していますし、指導者、保護者、そして生徒が一丸となる勝利主義とも言える部活に合理性があるとは思えません。

番組では、週休2日のサッカー部の生徒の自主練で県大会3位になった話が紹介されていましたが、私の中学時代と経験と重なりました。あらためて、時間の長さより効率性や自主性が重要であることに気づかされました。