Dr. TAIRA のブログII

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消費期限・賞味期限はだれが決めているか

食品の消費期限賞味期限は私たちの生活に馴染み深いものです。私たちがスーパーやコンビニで食品を買うとき、ほとんどの場合表示されている期限に目がいくことでしょう。少しでも期限が長いものを求めて、ケースの奥の方から商品を取り出したりすることはよくあることです。

 
消費期限と賞味期限については、以下のように別ページで紹介しましたので、ご参照いただきたいと思います。
消費期限、賞味期限の表示は、食品の種類ごとに法令で義務づけられています。そのことは理解できますが、では期限の設定というものは、実際、誰がどのようにして決めているのでしょうか。
 
結論から言うと、消費期限、賞味期限の表示はその食品を製造・販売する業者に委ねられています。少々乱暴な言い方をすれば、メーカーが勝手に期限を決めているのです。
 
このようなやり方の根底にあるのは、図1に示すように、食品のことを一番よく知っているのは業者自身であり、だからこその業者が責任をもって表示すべきであるという考えです。責任があるこそ、期限の表示には、科学的根拠、合理性、そして企業倫理が求められます。製造・販売業者は必要情報として、食品の特性、衛生管理、保存状態などを把握し、科学的根拠をもって期限を設定しなければなりません。
 
過去に法令上の表示違反とされた業者は、科学的根拠がなく勝手に期限を延長していたケースがほとんどです。
 
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図1. 消費期限、賞味期限の根拠と設定の仕方
 
それでは実際にどのようにして消費期限と賞味期限が決められているか、実例で示しましょう。図2に、私がアドバイザーとして関わったあるメーカーの生揚げと油菓子の期限設定のための保存試験のデータを示します。
 
この生揚げの保存試験では、一般細菌数(決められた条件下で出現する細菌数)、外観、臭い、風味を試験項目として用いました。この生揚げを冷暗所(10℃)で保存したところ、6日目に菌数が220万となり、臭いが発生し、風味も損なわれるようになりました。食品の規格基準では、一般的に菌数10万オーダーを限界として定めていますので、測定4項目をすべてを満たす限界は4日目ということになります。すなわち可食期間は4日ということになりました。さらに消費期限は、安全率80%を乗じて3.2日(3日)となります。これは10℃保存で得られた結論ですが、実際の表示ではさらに4℃以下保存とすることで、安全性を強化しています。
 
油菓子の場合は、図に示すような5項目を室温で試験し、可食期間は150日となりました。同様に安全率を乗じて、賞味期限は120日となります。
 
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図2. 消費期限と賞味期限設定のための保存試験
 
上記のように、消費期限も賞味期限も安全率を乗じて設定されているので、期限を過ぎても食べられなくなるわけではありません。しかし、消費期限はある一定の条件下(たとえば開封前、4℃以下保存)での期限設定であり、実際の家庭では厳密に守られるものではありません。たとえば肉類の保存条件は4℃以下ですが(図3)、食品が詰まった冷蔵庫の中ではほとんど4℃以上です。すぐに食べない(冷凍する)ということでなければ、3℃以下に設定してあるチルド室やパーシャル冷蔵室でを利用した方がよいし、かつ消費期限内に食べ切りましょう。
 
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図3. 肉の保存温度表示(安売りしていたので思わず買ってしまった牛肉)
 
賞味期限は少々過ぎても食べられなくなるわけではありません(元々安全率を考慮して期限設定されています)。私の場合、たとえば賞味期限を1週間以上過ぎた卵はゆで卵にしたり(生では食べない方がよい)、納豆は納豆チャーハンにしたりして食べています。賞味期限を1ヶ月過ぎた納豆もそのままご飯に乗せて食べたことがありますが、少々アンモニア臭くなるものの食べられました。一方、インスタントラーメンやカップ麺の場合は、期限を1ヶ月以上過ぎる急に味が落ちて行くようです。
 
                                        
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