Dr. TAIRA のブログII

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カビと放線菌

プランター生ゴミ処理を始めて15日目になりました。今朝プーちゃんのフタを開けたところ、表面にカビが生えてました(図1)。よく見たら放線菌の白いコロニー(colony, 集落)もできていました。カビと放線菌のコロニーの見分け方は専門家でもむずかしいのですが、ここで少し説明したいと思います。
 
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図1. プランター生ゴミ処理容器の表面に生えたカビと放線菌のコロニー
 
カビは私たちと同じ真核生物ですが、放線菌は原核生物であり、細菌バクテリア)です。カビは放線菌よりも細胞径が10倍ほど大きく、その分自然状態で目視可能な大きなコロニーを作ります。私たちの生活の中では、古くなったミカンやパンの上に着色したカビのコロニーを見るのはよく経験することです。

生ゴミ処理器の中では水分が多い時に表面に白いコロニーが生えたり、未分解のミカンの皮や固形物の表面に有色のコロニーができたりします。見分け方ですが、空間にフワッと広がった綿のような感じのコロニーがカビです。色は土表面に生えるのは白色、固形物表面には加えて茶色、青色、黒色のものがあります。生える条件としては含水率が50%以上、温度が40℃以下の場合です。良好な生ゴミ分解が進んでいる容器ではしばしば温度が50℃を越えますが、このような高温環境では生えにくくなります。また、電動生ゴミ処理機や生ゴミ負荷量が小さい生ゴミ処理器では乾燥気味になりますが(含水率は≤40%)、カビはほとんど生えません。

カビは元々細菌よりも乾燥に強いのですが、生ゴミ処理器の中で目視できるコロニーとして生えるにはある程度の湿気が必要になります。処理器にフタをしてしばらく放置しておくと湿気がこもり、表面に生えやすくなります。

重要ポイント
●カビは空間に広がるフワッとしたコロニーを作る(目視が容易)
生ゴミ処理器の中では湿気が多いとき生えやすい
●高温には弱く50℃以上ではほとんど見られない

放線菌は細菌の仲間ですが、その名のとおり放射状に伸びる糸状細胞をもつことで特徴付けられます。寒天培地上で培養すると、寒天培地中に伸びていく基生菌糸を作るものと、寒天表面上から大気中に伸長する気菌糸を作るものの二種類に分けられます。しかし、カビと比べると細胞が圧倒的に小さいので、目視では空間に広がるようなコロニーにはならず、粉をふいたような、あるいはビロードのようなコロニーとして認識できます。安定期にある生ゴミ処理機(器)では優占し、生ゴミ分解の主要な役割を果たしており、しばしば処理物の表面に白い粉のように見えるコロニーとして現れます。また、カビと比べて高温に強い菌種が多く存在します。

放線菌はアクチノバクテリア(phylum Actinobacteria)という系統に属する細菌の俗称(慣用名)であり、菌糸の長さも菌種によって様々です。さらに、この系統には菌糸を作らない桿菌や球菌の菌種も沢山存在します。したがって、形態的に明らかに放線菌と呼べるものとそうでないものとの境界は曖昧で厳密には区別できません。このような菌糸を作らないアクチノバクテリア生ゴミ処理器の中で優占しており、菌糸を作る菌種よりもむしろ多数を占めます。

重要ポイント
●放線菌は処理物表面に粉をふいたようなコロニーを作る
●安定期にある生ゴミ処理過程で優占する
●高温には強い菌種が多く存在する

               

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