先日、NHKのニュースウォッチ9でジオエンジニアリングを取り上げていました。ジオエンジニアリングとは、環境を地球規模で人工的に変えていく技術のことです。主目的は地球温暖化の防止で、ずばり人工的に地球を冷やすというものです(図1)。
地球温暖化はいま加速度的に進行しています。このままだと2050年頃に平均気温が2℃前後上昇すると予想されています(図2)。いまの子供達が社会の中心になる頃の年代です。たった2℃だと思われるかもしれませんが、これは恐ろしいくらい大変なことです。自分の体温が2℃上がることを想像してみたらわかると思います。
さらに地球が温暖化すると、永久凍土が溶けてきます。それによって、それまで閉じ込められていたメタンが大気中に放出されます。メタンは二酸化炭素の20倍以上の温室効果をもっているので、その影響は計り知れません。メタンの大気中への放出はもはや止められないという研究者もいます。
まさしく負のスパイラルが現在進行中であり、手遅れという人もいるほどです。にもかかわらず、二酸化炭素の排出量は昨年に比べて2.7%も増加したそうです。
ジオエンジニアリングはまさしく今、瀬戸際対策として考えられている技術です。具体的には特定の化学物質や微粒子を地球規模で大気中にばら撒き、人工的に気候を変えたり、太陽光を遮ったりして、冷やすというものです(図3A)。
その効果の実例はすでにあります。自然現象である火山の大規模噴火によって火山灰が大気中に広がり、地球の平均気温が0.5℃下がったことが過去にあります(図3B)。
しかし、微粒子を撒くという単純な発想に、その副作用をも含めて問題視する声も多く聞かれます(図4)。
まず、ジオエンジニアリングの中で、成層圏に微粒子を散布する方法は、技術的にもコスト面でも最も実現性が高いとしても、地球温暖化の原因である「二酸化炭素やメタンを削減する」という根本的防止対策にはならないからです。
また、人類が経験したことがない技術だけに何が起こるかわからない怖さがあります。何か起こった時にそれを途中で止める術を人類は持ち合わせておらず、壊滅的な結果になる可能性もあります。このような副作用に目をつぶって研究を進めるべきではないという主張も聞かれます。
個人的には、やはり人間の前のめりの欲望と浅はかさを感じます。地球温暖化防止対策としては、温室効果ガスの排出を抑制することが一番のはずなのに、前年並みの排出量にさえ抑えることができない始末です。ジオエンジニアリングは、言わば発想が「臭いものにはフタをしてしまえ」という浅知恵の技術であり、偉大な技術を成功させたいという研究者の前のめりの欲望も感じてしまいます。
社会がジオエンジニアリングに興味を持ち、情熱を注ぐらいであれば、それを温室効果ガスの排出抑制に向けてはどうかと単純に思うのですが、大脳皮質の発達とともに好奇心と欲望の塊に進化した人類には、もはや無理なのかもしれませんね。
カテゴリー:気候変動と地球環境問題